小倉百人一首の歌人たち
歌番号 名前 墓所
1 天智天皇 秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ
わが衣手は 露にぬれつつ
京都府京都市山科区御陵上御廟野町 山科御廟野古墳 有史以前
2 持統天皇 春過ぎて 夏来にけらし 白妙の
衣干すてふ 天の香具山
奈良県高市郡明日香村大字野口 野口王墓古墳 (2010/03/22) 貝吹山
(2013/01/27) 高松塚古墳壁画修理作業室公開
3 柿本人麻呂 あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の
ながながし夜を 独りかも寝む
奈良県天理市櫟本町 和爾下神社
4 山部赤人 田子の浦に うち出でて見れば 白妙の
富士の高嶺に 雪は降りつつ
奈良県宇陀市榛原山辺三 (2013/05/05) 額井岳
5 猿丸大夫 奥山に 紅葉踏み分け 鳴く鹿の
声聞く時ぞ 秋は悲しき
6 中納言家持 大伴家持 鵲の 渡せる橋に 置く霜の
白きを見れば 夜ぞ更けにける
7 阿部仲麻呂 天の原 ふりさけ見れば 春日なる
三笠の山に 出でし月かも
8 喜撰法師 喜撰 わが庵は 都の辰巳 しかぞすむ
世をうぢ山と 人はいふなり
9 小野小町 花の色は うつりにけりな いたづらに
わが身世にふる ながめせしまに
10 蝉丸 蝉丸太夫 これやこの 行くも帰るも 別れては
知るも知らぬも 逢坂の関
福井県丹生郡越前町厨
11 参議篁 小野篁 わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと
人には告げよ 海人の釣り舟
京都市北区紫野西御所田町 島津製作所紫野工場
12 僧正遍昭 遍昭 天つ風 雲の通ひ路 吹きとぢよ
乙女の姿 しばしとどめむ
京都市山科区北花山中道町
13 陽成院 陽成天皇 筑波嶺の 峰より落つる みなの川
恋ぞ積もりて 淵となりぬる
京都府京都市左京区浄土寺真如町 神楽岡東陵 有史以前
14 河原左大臣 源融 陸奥の しのぶもぢずり 誰ゆゑに
乱れそめにし 我ならなくに
京都府京都市右京区嵯峨釈迦堂藤ノ木町 清凉寺
15 光孝天皇 君がため 春の野に出でて 若菜摘む
我が衣手に 雪は降りつつ
京都府京都市右京区宇多野馬場町 後田邑陵 有史以前
16 中納言行平 在原行平 立ち別れ いなばの山の 峰に生ふる
まつとしきかば 今帰り来む
岐阜県可児郡御嵩町比衣 在原行平卿墳
17 在原業平朝臣 在原業平 ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川
からくれなゐに 水くくるとは
滋賀県高島市マキノ町在原
18 藤原敏行朝臣 藤原敏行 住の江の 岸による波 よるさへや
夢の通ひ路 人目よくらむ
19 伊勢 難波潟 短き蘆の ふしの間も
逢はでこの世を 過ぐしてよとや
20 元良親王 わびぬれば 今はた同じ 難波なる
みをつくしても 逢はむとぞ思ふ
21 素性法師 素性 今来むと いひしばかりに 長月の
有明けの月を 待ち出でつるかな
22 文屋康秀 吹くからに 秋の草木の しをるれば
むべ山風を 嵐といふらむ
23 大江千里 月見れば ちぢにものこそ 悲しけれ
わが身ひとつの 秋にはあらねど
24 菅家 菅原道真 このたびは 幣も取りあへず 手向山
紅葉の錦 神のまにまに
福岡県太宰府市宰府 太宰府天満宮
25 三条右大臣 藤原定方 名にし負はば 逢坂山の さねかづら
人に知られで くるよしもがな
京都市山科区勧修寺下ノ茶屋町
26 貞信公 藤原忠平 小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば
今ひとたびの みゆき待たなむ
27 中納言兼輔 藤原兼輔 みかの原 わきて流るる いづみ川
いつ見きとてか 恋しかるらむ
28 源宗于朝臣 源宗于 山里は 冬ぞさびしさ まさりける
人目も草も かれぬと思へば
29 凡河内躬恒 心あてに 折らばや折らむ 初霜の
おきまどはせる 白菊の花
30 壬生忠岑 ありあけの つれなく見えし 別れより
暁ばかり 憂きものはなし
31 坂上是則 朝ぼらけ ありあけの月と 見るまでに
吉野の里に 降れる白雪
32 春道列樹 山川に 風のかけたる しがらみは
流れもあへぬ もみぢなりけり
33 紀友則 ひさかたの 光のどけき 春の日に
しづ心なく 花の散るらむ
34 藤原興風 誰をかも 知る人にせむ 高砂の
松も昔の 友ならなくに
35 紀貫之 人はいさ 心も知らず ふるさとは
花ぞ昔の 香ににほひける
滋賀県大津市 裳立山
36 清原深養父 夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを
雲のいづこに 月宿るらむ
37 文屋朝康 白露に 風の吹きしく 秋の野は
つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける
38 右近 忘らるる 身をば思はず 誓ひてし
人の命の 惜しくもあるかな
39 参議等 源等 浅茅生の 小野の篠原 忍ぶれど
あまりてなどか 人の恋しき
40 平兼盛 忍ぶれど 色に出でにけり わが恋は
物や思ふど 人の問ふまで
神奈川県三浦郡葉山町 新善光寺
41 壬生忠見 恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり
人知れずこそ 思ひそめしか
42 清原元輔 契りきな かたみに袖を しぼりつつ
末の松山 波越さじとは
熊本県熊本市西区 清原神社(北岡神社境内社)
43 権中納言敦忠 藤原敦忠 逢ひ見ての のちの心に くらぶれば
昔は物を 思はざりけり
44 中納言朝忠 藤原朝忠 逢ふことの 絶へてしなくは なかなかに
人をも身をも 恨みざらまし
45 謙徳公 藤原伊尹 あはれとも いふべき人は 思ほえで
身のいたづらに なりぬべきかな
46 曾禰好忠 由良のとを 渡る舟人 かぢを絶え
ゆくへも知らぬ 恋の道かな
47 恵慶法師 恵慶 八重むぐら 茂れる宿の さびしきに
人こそ見えね 秋は来にけり
48 源重之 風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ
くだけて物を 思ふころかな
49 大中臣能宣朝臣 大中臣能宣 みかきもり 衛士のたく火の 夜は燃え
昼は消えつつ 物をこそ思へ
50 藤原義孝 君がため 惜しからざりし 命さへ
長くもがなと 思ひけるかな
51 藤原実方朝臣 藤原実方 かくとだに えやはいぶきの さしも草
さしも知らじな もゆる思ひを
宮城県名取市愛島
52 藤原道信朝臣 藤原道信 明けぬれば 暮るるものとは 知りながら
なほうらめしき 朝ぼらけかな
53 右大将道綱母 藤原道綱母 嘆きつつ ひとり寝る夜の 明くるまは
いかに久しき ものとかは知る
54 儀同三司母 高階貴子 忘れじの 行く末までは かたければ
今日をかぎりの 命ともがな
55 大納言公任 藤原公任 滝の音は 絶えて久しく なりぬれど
名こそ流れて なほ聞こえけれ
京都府京都市左京区岩倉長谷町 常春庵(所在不明)
56 和泉式部 あらざらむ この世のほかの 思ひ出に
今ひとたびの 逢ふこともがな
兵庫県伊丹市北園 (2007/04/19) 伊丹緑道
兵庫県川西市 無二寺 (2013/05/12) 鼓ヶ滝
57 紫式部 めぐりあひて 見しやそれとも 分かぬまに
雲がくれにし 夜半の月かな
京都市北区紫野西御所田町
58 大弐三位 藤原賢子 ありま山 猪名の笹原 風吹けば
いでそよ人を 忘れやはする
59 赤染衛門 やすらはで 寝なましものを さ夜更けて
かたぶくまでの 月を見しかな
60 小式部内侍 大江山 いく野の道の 遠ければ
まだふみも見ず 天の橋立
61 伊勢大輔 いにしへの 奈良の都の 八重桜
けふ九重に にほひぬるかな
62 清少納言 夜をこめて 鳥のそらねは はかるとも
よに逢坂の 関は許さじ
京都市中京区新京極桜ノ町 誓願寺
徳島県鳴門市里浦町 尼塚
63 左京大夫道雅 藤原道雅 今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを
人づてならで 言ふよしもがな
64 権中納言定頼 藤原定頼 朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに
あらはれわたる 瀬々の網代木
65 相模 恨みわび ほさぬ袖だに あるものを
恋に朽ちなむ 名こそ惜しけれ
66 前大僧正行尊 行尊 もろともに あはれと思へ 山桜
花よりほかに 知る人もなし
67 周防内侍 平仲子 春の夜の 夢ばかりなる 手枕に
かひなく立たむ 名こそ惜しけれ
68 三条院 三條天皇 心にも あらでうき世に ながらへば
恋しかるべき 夜半の月かな
京都府京都市北区衣笠西尊上院町 北山陵 有史以前
69 能因法師 能因 あらし吹く 三室の山の もみじ葉は
竜田の川の 錦なりけり
大阪府高槻市古曽部町 (2009/05/20) 高槻の古墳
70 良暹法師 良暹 さびしさに 宿を立ち出でて ながむれば
いづこも同じ 秋の夕暮れ
71 大納言経信 源経信 夕されば 門田の稲葉 おとづれて
葦のまろやに 秋風ぞ吹く
72 裕子内親王家紀伊 一宮紀伊 音にきく たかしの浜の あだ波は
かけじや袖の ぬれもこそすれ
73 前中納言匡房 大江匡房 高砂の 尾上の桜 咲きにけり
外山の霞 立たずもあらなむ
74 源俊頼朝臣 源俊頼 憂かりける 人を初瀬の 山おろしよ
はげしかれとは 祈らぬものを
75 藤原基俊 契りおきし させもが露を 命にて
あはれ今年の 秋もいぬめり
76 法性寺入道前関白太政大臣 藤原忠通 わたの原 こぎいでて見れば 久方の
雲ゐにまがふ 沖つ白波
京都府京都市東山区泉涌寺山内町 今熊野観音寺
77 祟徳院 祟徳天皇 瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の
われても末に あはむとぞ思ふ
香川県坂出市青海町 白峯陵
78 源兼昌 淡路島 かよふ千鳥の 鳴く声に
いく夜寝ざめぬ 須磨の関守
79 左京大夫顕輔 藤原顕輔 秋風に たなびく雲の 絶え間より
もれ出づる月の 影のさやけさ
80 待賢門院堀河 長からむ 心も知らず 黒髪の
乱れてけさは 物をこそ思へ
81 後徳大寺左大臣 徳大寺実定 ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば
ただありあけの 月ぞ残れる
82 道因法師 藤原敦頼 思いわび さても命は あるものを
憂きにたへぬは 涙なりけり
83 皇太后宮大夫俊成 藤原俊成 世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る
山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる
京都市伏見区願成町 南明院
84 藤原清輔朝臣 藤原清輔 ながらへば またこのごろや しのばれむ
憂しと見し世ぞ 今は恋しき 藤
85 俊恵法師 俊恵 夜もすがら 物思ふころは 明けやらで
閨のひまさへ つれなかりけり
86 西行法師 西行 嘆けとて 月やは物を 思はする
かこち顔なる わが涙かな
大阪府南河内郡河南町弘川 弘川寺
87 寂蓮法師 寂蓮 村雨の 露もまだひぬ まきの葉に
霧たちのぼる 秋の夕暮れ
88 皇嘉門院別当 難波江の 葦のかりねの ひとよゆゑ
みをつくしてや 恋ひわたるべき
89 式子内親王 玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば
忍ぶることの 弱りもぞする
京都市上京区般舟院町 般舟院陵内
90 殷富門院大輔 見せばやな 雄島のあまの 袖だにも
ぬれにぞぬれし 色はかはらず
91 後京極摂政前太政大臣 九条良経 きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに
衣かたしき ひとりかも寝む
京都市東山区本町十五丁目 大機院
92 二条院讃岐 わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石の
石こそ知らね かわく間もなし
93 鎌倉右大臣 源実朝 世の中は 常にもがもな 渚こぐ
あまの小舟の 綱手かなしも
神奈川県鎌倉市扇ヶ谷 寿福寺
94 参議雅経 飛鳥井雅経 み吉野の 山の秋風 さ夜ふけて
ふるさと寒く 衣うつなり
95 前大僧正慈円 慈円 おほけなく うき世の民に おほふかな
わが立つ杣に すみぞめの袖
京都府京都市東山区泉涌寺山内町 今熊野観音寺
96 入道前太政大臣 西園寺公経 花さそふ 嵐の庭の 雪ならで
ふりゆくものは わが身なりけり
97 権中納言定家 藤原定家 来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに
焼くや藻塩の 身もこがれつつ
京都市上京区今出川通烏丸東入 相国寺
98 従二位家隆 藤原家隆 風そよぐ ならの小川の 夕暮れは
みそぎぞ夏の しるしなりける
大阪市天王寺区夕陽丘町 家隆塚 (2007/02/10) 上町台地
99 後鳥羽院 後鳥羽天皇 人もをし 人もうらめし あぢきなく
世を思ふゆゑに 物思ふ身は
京都市左京区大原勝林院町 大原陵
100 順徳院 順徳天皇 ももしきや 古き軒端の しのぶにも
なほあまりある 昔なりけり
京都市左京区大原勝林院町 大原陵